表示中の記事は2019年6月30日までの旧記事です。

血便 〜やさしくしてね〜

やって見せ 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ

 

たまには横からお邪魔して、指導医日記にかこつけて、、、大腸肛門外科阿嘉

 

下血は上部消化管からの黒い便、血便は下部消化管からの赤い便と定義されています。

血便を主訴に受診されたら、まずは直腸診で直腸がんが触れないかを確かめます。指についてくる便の色も見ます。次に鮮血なほど肛門に近い出血ですから(大量の場合はもっと上流からと判断しますが)、痔出血を疑い、肛門鏡で出血点がないかを見ます。

 

デリケートな肛門の診察には特段優しく接しなければなりません。自分の切れ痔経験からも肛門の痛みは脳天を貫きます。横向きのシムス位で患者さんは羞恥心と恐怖を感じているのだと毎回思い返し、タオルをかける、声をかけるなど気を配ります。タオルは肛門が見えるまでずらしても大腿部にタオルを感じるだけでも安心感があります。さてここで気合を入れて「よしっ!」や「いくぞ!」と発してはいけません。患者さんがぎょっとして振り返ります。

 

ところで、以前に研修医としてやってきた若い女医さんが救急外来で「先生、血便の患者さんがいます。」というので直腸診をしてもらおうと機会を与えた時に、私に向かって目を輝かせ、中指を立てて「やります!」とガッツを示しましたが(笑)、これにたじろいではいられません。もちろん全周に仔細に診察するためにも示指で診察することを指導しました。

 

また余談ですが、長崎にて直腸診の場で、最後のビニール手袋Mサイズを私がはめ、大先輩にSサイズを手渡したところ「これしかないのか」と言われ「大丈夫ですよ先生」と続けて直腸診した時、「ほれみろ破れたやないか」と指を突き出されたのでとっさに「先生の時代は素手で直腸診して石鹸で良く洗う世代では?」と返すと「ばか、指サックがあったわい!」と怒られました。肛門にも指にも優しく注意を払いましょう。

 

またまた余談ついでに手術用の手袋の発祥は1882年米国乳腺外科医Halsted先生が手術室看護師Hamptonさんの手荒れ(1867年Listerがフェノールによる清潔手術を発表以来術後感染死は激減するも術者の手は荒れた)に手術室に留まって欲しくて、Goodyear社に極薄の手袋を試作させたことから始まり、二人は後に結婚しています。優しい話の追記とします。

 

タオルかけ 手袋はめて ゼリーつけ 優しく入れねば 門は開かじ