今回のブログは臨床工学科が担当します。
ハートライフ病院の手術室での臨床工学技士の業務の変遷を紹介したいと思います。
病院の手術室(オペ室)の機器管理からスタートした私たち臨床工学技士(CE)の業務ですが、ある大きな転機を境にその役割は劇的に広がっていきました。それが、手術に直接介助として参加する「器械出し」への挑戦です。
今回は、機器管理の仕組み作りから始まり、器械出しへの挑戦を経て、私たちがどのように手術室の安全性を根本から向上させてきたのか、その進化の軌跡をご紹介します。
第1章
鳴りやまない電話から始まった「医療機器管理の仕組み作り」
約5〜6年前、当初のオペ室は機器のトラブルが多く、とにかく私たちの元へ電話が頻繁にかかってくる状態からのスタートでした。そこで、専任のスタッフを常駐させ、麻酔器の朝の点検などから業務の整備を始めました。
転機となったのは、iPadを使った点検システムの導入です。それまで紙で行っていたチェックをデジタル化したことで操作性が劇的に向上しました。日常的に点検を行う体制が整ったことで、以前のように病院の監査前に慌てて準備をすることはなくなり、常に安全な状態を提供できる基盤が完成したのです。
第2章
業務の拡大と、課題への挑戦
機器管理の基盤が整った後、私たちは感染管理が最も厳しい整形外科を皮切りに、手術の直接介助である「器械出し」にも入るようになりました。
対応できる手術が増えることは喜ばしい反面、業務の幅が広がりすぎた結果、夜遅くまでの残業など厳しい勤務体制が続く過酷な時期もありました。また、多種多様な手術の手順を覚え、メンバー間でローテーションを組んで対応することの難しさにも直面しました。未だ道半ばですが、この課題に対しれ、現在も現場の最前線で取り組んでいます。この「器械出し」への挑戦は、私たちの「現場力」を底上げすることに繋がりました。
第3章
鉗子点検と予防保守〜「呼ばれない日」を目指して〜
私たちが真に目指したのは、トラブル対応に追われることではなく、「トラブルが起きず、誰からも呼ばれない日」を作ることでした。
その一環として力を入れたのが、電気メスなどで使用する「鉗子の被覆の破れ(漏れ)」の点検です。被覆のわずかな破れは、患者さんの熱傷など重大な医療事故に直結する恐れがあります。こうした細かい機器の劣化を事前に発見し、トラブルを未然に防ぐ「予防保守」を徹底したことで、手術室の安全性は劇的に向上と考えています。さらに安定した手術環境を提供するために予防保守に力をいれていきたいと考えています。
第4章
「現場を知る強み」〜業者にはできないCEならではの安全管理〜
器械出しとして現場に入ったことで得た最大の武器は、「現場での実際の使われ方を完全に把握していること」です。
外部のメーカーや業者に機器のトラブル調査を依頼しても、「持ち帰って点検しましたが、異常はありませんでした」で終わってしまうことが少なくありません。しかし、私たち臨床工学技士は、機器の専門知識に加えて「現場でどんな操作をしたからそのエラーが起きたのか」という運用面をセットで理解しています。
そのため、電話で呼ばれても瞬時に原因を特定し、その場ですぐに的確な解決策を提示できます。IT周りやモニター配線のトラブルも含め、業者任せでは実現できない「現場の状況に即した迅速な解決」こそが、手術の遅れや医師のストレスをなくし、結果として患者さんの安全を守る大きな柱となっています。
第5章
教育への貢献
私たちが現場に定着したことで、「器械出し」の頻度、経験値が増えて、「器械出し」の手技を新しく入った看護師などに教える「教育的役割」も担うようになりました。もちろん、新規導入医療機器の伝達のための資料作成も行っています。スマートフォンから確認できる機器の操作マニュアルの整備も進めていく予定です。